各エピソードが絡み合う小説

一冊の本の中で、それぞれの話が独立しているようにみせかけて、読み進めていくとそれぞれのエピソードが絡み合って、最後のプロローグに向けて伏線回収するように綺麗に一つの大きな流れにまとまって結末を迎える小説が好きです。

そういう形式の小説の中でも、私が特に面白いと思った作品をいくつかご紹介します。
選定要素としては、各エピソードが面白いだけでなく、ちゃんと最後に向けて盛り上がっていくかというのが重要なポイントです。

ナミヤ雑貨店の奇跡 / 東野圭吾

ナミヤ雑貨店の郵便受けは、誰かが悩み事を投函すると店主が解決法を返信してくれる「お悩み相談箱」として有名なのだけれど、実は「時を超える郵便受け」になっていて、大昔に投函された手紙を、現代人が店主に代わって過去にむけて返信できてしまいます。タイムトラベル的なやり取りの面白さと、その不思議さゆえに迎える各エピソードにいろんな感情を揺り動かされます。最後は、各章の登場人物がそれぞれに影響を与え合いつつ綺麗にお話がまとまっていき、その結節点店主に変わって返事を代返していた3人組の結末が描かれ、ほっこりとした読後感を味わえます。

「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野圭吾

犬がいた季節

高校の敷地内で飼われているコーシローという名前の犬が、各章の登場人物の引き立て役として活躍します。コーシローが一生を通じて見た情景を描いているので、昭和から平成へと長い時間の流れに沿って、それぞれの時代の流行や気風が描写されているのも面白いです。最後は大人になった各章の登場人物を描きつつ、中でも一番の主役級キャラである少女を主体とした嬉しい結末に向けて話がまとまっていく、とても読後感の良い一冊です。

「犬がいた季節」伊吹有喜

阪急電車 / 有川浩

阪急沿線の各駅で乗り降りするそれぞれの人の目線で、各駅ごとに区切られた短めの物語として構成されていて読みやすいです。

「阪急電車」有川ヒロ

また、同じ夢を見ていた / 住野よる

各エピソードは主人公の少女視点で固定されているのだけど、彼女に関わる女性が各章ごとに異なり、内容もガラリと変わるので、それぞれ別のお話を読んでいるように感じると思います。最後は全ての登場人物が主人公の少女へと帰結し、綺麗に伏線回収されて気持ちよく読み終えることができます。

「また、同じ夢を見ていた」住野よる

ハケンアニメ / 辻村深月

1,2,3章とそれぞれ異なる女性の目線で、アニメ制作業界でのエピソードが描かれます。1,2章と徐々にボルテージが高まっていき、最後の3章で爆発的に盛り上がって伏線回収され、ハッピーエンドでプロローグへと繋がっていきます。

「ハケンアニメ」辻村深月

きみの友だち / 重松清

事故で松葉杖になった少女を主人公に、彼女に関わる周囲の人物ごとの物語が描かれます。特に彼女と同級生で唯一の友だちだった難病の少女との交流を感動と共に描き、最後は各登場人物の成長した姿を描きつつ、大人になった少女の幸せな結末が描かれています。成長してなさそうな人物もきちんと描かれているのがリアルで面白いです。
Kindle Unlimitedの読み放題に設定されているので、重松清さんの著作の中でも泣ける小説の上位だと思いますので、感動を求める読者さんにぜひおすすめです。

「きみの友だち」重松清